水郷地帯が拡がる蟹江町周辺の郷土料理は、素材として川魚を使った料理が多いのが特色です。また、冬場の伊吹颪を利用した保存食品(乾物)作りなども取り上げています。画像をクリックするとblog版にて詳しく紹介させていただいているものもあります。
戦国時代、天正12年(1584)に勃発した「蟹江合戦」で誕生したと伝えられている茶粥です。籠城した豊臣側兵士が食事用意の際、徳川側の「呼ばわり攻め」に慌ててお茶を沸かしている鍋に米を投げ入れて誕生したと伝えられています。蟹江町内でも蟹江川流域の舟入・本町・今地区で限定的に食されているものです。お茶の葉を使う場合もありますが、拘りのある方は、カワラケツメイを焙じて使っているようです。
もろこ寿司です。「もろこ」とは淡水魚の小魚、7月の虫干しの頃から、近辺の小川や用水に網をはり、田圃の水とともに落ちてきたものを獲り、醤油や味醂などの調味料で甘辛く煮詰め、寿司飯の上に揃えて押し寿司にしたものです。
はえ寿司です。「はえ」とは、鮒の幼魚のことで、もろこ同様、小川や用水で獲り、甘露煮にしたものを押し寿司にしたものです。もろこよりもほろ苦い味が特徴です。
あなご寿司です。この地方では穴子のことを別名「めじろ」とも言いました。蟹江の漁港では、特に穴子が漁獲されていたのであなご寿司は、この地方でよく食べられたようです。なお、巻き寿司、いなり寿司と併せて、この地方の「田舎寿司」として販売もされています。
真冬なると恋しいのが「鮒味噌」です。川で獲れたマブナ(ギンブナ)のハラワタを除き、丸ごと白焼きにした後に、水に浸した大豆を敷き詰め八丁味噌や酒、みりんを加え煮込んで出来上がります。煮上がった鮒は骨まで柔らくなり冬の味覚として各家庭の保存食として利用されてきました。
蟹江を代表する郷土料理「いな饅頭」です。出世魚「鯔」の幼魚である「いな」のハラワタの外側を傷つけることなく独特の包丁を使って抜き取り、八丁味噌、松茸、銀杏、麻の実、柚子などの珍味を混ぜ合わせて詰め込み焼いたものです。旬は、9月下旬から翌年3月頃まで、水郷蟹江の味覚です。蟹江町内の3軒の料亭で取り扱っていますが、事前に予約が必要です。
ぼら雑炊です。雑炊と言っても水っぽい物ではなく、鯔の炊き込みご飯のことを「鯔雑炊」と言います。鯔の臭みを除くためにショウガ、油揚げ、越津ネギを使っているのも特徴の一つです。この地方の行事や会合など振る舞われることも多かったようです。鯔の代わりに秋刀魚を使った炊き込みご飯も盛んに作られているようです。
蟹江町では混ぜご飯のことを「かきまし」とも言います。こちらも地域の行事などの際に振る舞われることが多い郷土料理の一つです。
ひきずり鍋です。これは鶏肉のすき焼き鍋、鶏肉文化圏の名古屋地方でも、とても贅沢な料理でした。現在は、素材に名古屋コーチンと越津ネギを使うのが一般的ですが、かつては卵を産まなくなった廃鶏を潰した肉を使っていたようです。
蟹江の正月雑煮です。蟹江を始めとする名古屋地方の正月雑煮は、醤油出汁に角餅と餅菜(愛知正月菜)が入り、花鰹を振りかけた実にシンプルなものです。これから一年間「名(菜)が持ち(餅)上がる」とか「名(菜)が持ち(餅)上げる」との縁起を担いだものだそうです。縁起物ですから、正月早々、菜(名)に包丁を入れて切り刻むのは良くないので、葉が大きい場合は、前日の大晦日のうちに仕上げる必要があると拘る方もみえるようです。
味噌煮込みうどんです。ご存じ「名古屋めし」の一つでもあります。寒くなると熱々の味噌煮込みうどんが有難いです。伝統野菜「越津ネギ」が美味しくいただける料理の一つでもあります。
土筆の卵とじです。東海地方は、特に土筆を好んで食べるようですね。卵とじや天麩羅、炊き込みご飯の素材として春の到来を感じる旬を楽しむ家庭料理の一つです。
かりもりの味噌漬けです。かりもりは、尾張平野で古くから栽培されてきた漬物専用の堅瓜です。酒粕漬けや味噌漬けでいただくと特に美味しく、バリバリとする歯ごたえなど食感もあって、家庭菜園で栽培される方が多いようです。我が家では、味噌漬けをもっぱら作っています。
切り干し大根です。晩秋から冬にかけて日本でも有数の寒風「伊吹颪」が吹きこむ尾張平野一帯では「切り干し大根」作りが盛んに行われました。上質な宮重大根を産出するなど適したことも切り干し大根づくりが盛んになった一因として上げられます。とても上質な切り干し大根に仕上がり、大根を生食・煮込むよりもカルシウム分など栄養価が多くなるなど保存食としても貴重な存在です。
干し芋です。サツマイモを蒸して乾燥させたもので、乾燥芋とも呼ばれています。収穫後のサツマイモを水で洗って、皮をつけたまま1~2時間ほどかけて蒸し上げます。蒸し器から出した後、約1㎝程度の厚さに切ってから「すだれ」等に広げ、冬場の乾燥した寒風(伊吹颪)に晒して天日で約一週間ほど干して出来上がります。蒸し上げたものを乾燥することで、保存性が高まるとともに糖化が進み甘味が増える効果があります。
里芋の葉柄のことで、尾張地方では「だつ」と云われています。葉柄を収穫後、茎を細く割いて乾燥させたものです。炭水化物、ミネラル、たんぱく質、脂肪などを含み、安価な栄養食品として家庭の惣菜などに利用されるとともに、貯蔵に耐えるので備荒食糧の役割も果たしてきました。出来上がった乾燥芋茎は、水に晒して柔らかくさせ、だし汁、酒、醤油、味醂又は砂糖を加えたなか煮込み、刻んだ油揚げを加えるなどして調理します。主に八頭など赤茎系の品種が、芋茎作りには適しているようです。
干し柿です。切り干し大根同様、こちらも晩秋になると各家の軒下で盛んに渋柿を吊るして作られています。
番外ですが、蟹江の特産品に「白イチジク」があります。毎年8月お盆前後から10月中旬頃にかけてが旬となり、店頭に並びます。明治から昭和30年代までが最盛期で名古屋や関西方面に出荷された歴史を有します。現在でも高級料亭などのデザートとして引き合いも多いようです。蟹江では白イチジクのことを「コウライガキ」と言って親しんでいます。10年程前から地元の商工会を中心に、「町おこし」の素材として白イチジクを使用し、スイーツなど関連商品の開発を行って販売しています。左画像をクリックしていただくと「蟹江の白イチジク」の歴史を紹介したページへとジャンプします。よろしければご覧ください。